長野県立科町へ 旅する移住

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一人多役インタビュー

染色×喫茶店主宰

お話を聞いた人
本間 江里さん

本間 江里(ほんま えり)

1976年生まれ/東京都出身

大手広告代理店に勤務し、クリエイティブ集団の中でオフィス系の業務を担当していた本間さん。身近に制作現場があった影響は大きく、何かを作り出すということに少しずつ引き込まれていきました。子どもの頃から人と同じことはしないタイプだったと話す本間さんですが、仕事に就いて何年か経つと、自分で考え仕事を進めたいと強く思うようになっていきます。

ものづくりの世界

移住するずっと前から、休日の時間を使って制作に没頭していたとのことですが?

「そうですね。平日は会社勤務、週末になると運営していたアトリエにそれぞれが集まって、制作や展示会を開くための準備に一生懸命でしたね。思えば、これが今の創作活動に通じるものだったのかもしれません。

最初は生地を使った服飾作品を中心に手掛けていましたが、作品を生み出していく中で出会ったのが“土染め”という新たな分野のものづくりです。ベンガラという土からとれる染料を使うのですが、この染料は燃焼の温度によって粒子の形が変わることで、いくつもの色が出せます。

また、自然由来のものなので使い終わった後も環境に負担をかけないという特徴を持っています。絵具と同様に色と色の掛け合わせで多様な色彩を表現できるんですよ。まるで化学の実験をしているかのような気持ちで、そのたびに新しい発見があります。」

環境が変わって仕事としてできることの幅が狭くなりませんでしたか?

「移住先の仕事をどうするのかというのが大きな壁ですよね。私たちの場合、主人の仕事の参考になればと思ってIターンフェアに軽い気持ちで足を運びました。その時は住む場所すら考えてなかったので “もし移住するとしたら”という程度の気持ちだったんです。

ところが数日たったある日、Iターンフェアで出会った企業に決まったという知らせが入り、そのあとは転がるようにいろいろなことが決まっていきました。入念な計画はこれと言ってありませんが、一つ大きな壁をクリアしたことで、それまで“もしも移住するなら”という気持ちが、徐々に“移住できる”に変わっていったように思います。どの自治体も力を入れているので支援策がちゃんとしてるなと感じました。」

環境の変化によって変わったことは何ですか。

「引っ越しをしたり、子どもが生まれたりと大きな節目にはしばらく立ち止まることはありましたが、新しい土地に来るということが、それまで温めていたアイデアを実現するきっかけになったと思います。実は制作の他にもやりたかったものがあって、喫茶店もその一つです。

もともと東京にいたころ、展示会からのつながりで応援してくれる方々はいましたが、同業が今よりもずっと多いこともあって、思ったより反応は薄かったように思います。
逆に地方に来てからの方が、こちらからの発信に対し、その後の反応をはっきりと感じることがあります。現在はワークショップを開いたり、講師として小学校に招かれたりと活動の幅が少しずつ広がってきています。」

食へのこだわり

ご自身のお店について教えてください。

「自分の店を持つという長年あたためてきた夢は、周囲の人たちのつながりから実現しました。Goji Goji sobockle (ゴジゴジソボックル)で提供するカレーは、季節のものを具材に使うことでその時どきの味を楽しんでもらえるよう心がけています。水はもちろんのこと、コメと野菜は地のものを使います。具材の組み合わせは多岐にわたり、メニューを考えるのも楽しみのひとつなんですよ。

定番のものから、聞いたことのない名前のメニューがあるので、お客様の反応は様々。耳慣れないものはどんな材料を使っているのか、お客様と話すきっかけになります。メニューを見ただけではイメージがわかないと敬遠されるのかと思ったんですが、挑戦する人の多さにびっくりしました。その反応が新鮮に感じられ、楽しいなって思っています。」

お店を運営していて難しい点というと?

「食事を提供することで避けては通れないのが“食品ロス”の問題です。私も例外なくこの問題と直面しています。時間をかけて作っても、日によってはどうしても残ってしまうことがあります。ある日、思い切ってSNS上に“救済カレー”というスレッドをあげてみたところ、この記事を見てくれた人たちが、消費しきれないカレーを買い求めに来てくれたんです。まさに拾う神!
こうした飲食店が抱える共通の課題に関係する皆さんと協力できたらと思った出来事でした。

この取り組みはすでに東京を中心に各地で広がり始めているフードシェアリング事業と同じです。情報を掲載するサイトを通じて期限が切れる前に消費者と商品をつなぐというもので、消費者が食品ロスを減らしたという実感が得られるという点も大きなポイントだと思います。」

ラボラトリーとしての機能を

染色の sobockleと喫茶店 Goji Goji sobockleを並行していますが、これからどんなことをしようと考えていますか?

「日々お客様と過ごすお店はどんな店にしようか今も模索しています。提供するメニューの考案もそうですが、やはり地域の人たちに共有されている感じを大事にしたいと考えています。
例えば、“子どものお迎え前にちょっとおしゃべりしたい”とか“○○さんがいるかもしれないから行こうかな”みたいに、ふらっと立ち寄れる居場所になれたらいいと思っています。
同時に私にとっての表現の場でもあるので、新しいことを取り入れてお客様の反応を見ながら、お店としての引出しを増やしたいですね。そういう意味で染め物も喫茶店もどちらも研究の場だと感じています。」

わたしたちのこれから

「家族そろって本の虫というほど本が好き。お気に入りのブックカフェに行って日がな一日読書にふけることもしばしばです。趣味が高じて自宅には〇〇〇冊の蔵書があります。書店のない立科町にブックカフェがあったら…なんてことを考えています。(あくまでも構想段階ですが)」