働く

一人多役インタビュー

建築家×地域おこし協力隊

お話を聞いた人
永田 賢一郎さん

永田 賢一郎(ながた けんいちろう)

東京都出身

横浜市で自身の設計事務所を営みながら、立科町で地域おこし協力隊として活躍されている永田さん。毎週横浜と長野を往復する忙しく、充実した毎日を送っています。
築97年の古商店を活用した「町かどオフィス」を拠点に、ご自身の建築家という職業をフルに活かした空き家のリフォーム・利活用といった空き家対策のほか、移住相談に取り組まれています。地域の方がふらっと立ち寄り、そのコミュニケーションの中から業務に関わる情報が舞い込んでくることもあり、それがとても新鮮とのこと。そんな永田さんにお話を伺いました。

移住は思い出の場所へ

ここへ移住することになった経緯を教えてください

横浜に住みながら自身で設計事務所を営んでいましたが、家が手狭になり引っ越そうかという話が出ていました。引っ越し先は特に近場という希望はなく、神奈川の逗子・葉山の辺りから遠くは長野くらいまで…という中で検討していました。あわよくばそこで仕事を見つけられたら良いなと思っていたのですが、ちょうどその時に立科町の地域おこし協力隊の募集を見つけました。立科町は小さいころ家族に連れてきてもらったり自身の結婚式を挙げた場所でもあり、将来老後は立科でも良いなとか、長野に引っ越すなら立科だよねなんて話もしていたので、翌日に応募をし、面接を経て晴れて採用という形になりました。

住民として地域に溶け込んでアプローチを

地域おこし協力隊での活動を詳しく教えてください

自治体によって色々な活動の枠がありますが、自分は移住・定住促進を担当しています。主にその中でも空き家の利活用とか、住民の方が所有している使っていない物件の賃貸や売買の促進といった活動をしています。2020年に拠点の「町かどオフィス」を整備して移住相談の窓口を作ってからケーブルテレビで番組をやらせてもらって広報もしています。毎年移住者の方はもちろん地域内の方の賃貸・売買の成約もあり、徐々に住民の皆さんにも浸透してきているかなといったところです。

建築の仕事は「施主さんが土地を買ってそこに住む」というものなので、移住・定住促進の活動に近いものを感じていて、自分の仕事の延長だと思っています。こちらの拠点のように横浜でも商店街の中に自分の設計事務所と、空き店舗を使って日替わりでお店が営業できる「シェアキッチン」というのを開いていて、自分で場所を作って地域の方に使ってもらうという事で町に賑わいが生まれたら良いなと思ってやっていましたが、こっちに来てから空き家の所有者さんに会ったり、地域の方とのコミュニケーションをする機会が増えました。気軽に「職」というよりは「住民」として会話をしてそこから相談を受ける機会があり、そういったアプローチの仕方が大事なのかと実感しています。

自分の経験が他者の気付きや発見につながる

地域おこし協力隊の活動でのやりがいはどういった場面で感じますか

思った以上に空き家の問題が深刻で、どう使って良いか分からないとか、どうしたら良いのか分からないという方が多い印象を受けます。設計事務所だと相談が来てからデザインするという仕事のやり方だったんですが、自分が見てきた事例だったり良いなと思った使い方をお伝えするだけでも「こういう使い方があるんだ」と知ってもらえたり、皆さんの気付きや発見に貢献できる事を嬉しく感じています。これは今まで自分のやってきた仕事では感じる事ができなかったもので、「こんなふうにお役に立てるのか」と思いました。

あるを活かした空き家の相談所

「町かどオフィス」について詳しく教えてください

ここは元々「藤屋商店」さんという建物で、僕が来た時には既に閉まってから15年程経っていたんです。芦田宿の中央にあって役場も近いし、移住サポートセンターである「ふるさと交流館芦田宿」もすぐ近くにあるので、立地も良い。空き家に関わる活動をするにあたって空き家を利用して相談所をやろうと思ったんです。内見した時に雰囲気もすごく素敵だったので、これをそのままにしておくのは勿体ないと思い、町と話し合って2020年11月にオープンとなりました。空き家の相談所としての機能を果たしながら、ここが芦田宿商店街のこれからの賑わいの最初の一歩になると良いなと思っています。

掃除はしましたが家具とかは捨てられてしまう不用品とか元々あった物を活用しています。ほぼ手を付けないまま照明や電球を買ったり、蛍光灯の位置を変えたくらいで改修費3万円で成り立っています。基本的には空き家は掃除すれば結構使える場所が多いです。ある程度手を加えるだけでも使える場所があると言うメッセージにもなるかなと思っています。ただ冬はめちゃめちゃ寒いです(笑)地域の方が見かねていらないストーブを持ってきてくれました(笑)ここはふるさと交流館のサテライトオフィスみたいな感じで使えれば良いから、いざという時はそっちへ行けば良いし多少の不便は目を瞑ろうと。そのへんの緩さも町の雰囲気というか、交流しながらできるこの場所ならではなのかなと思います。

大好きな町でのこれから

これからの展望と移住を検討されている方へのメッセージをお願いします

これからの活動ですが、移住促進はもちろん空き家がまだまだあるので活用してお店をやったりとか、事務所にしたりとか色んな使い方ができると良いなと思っています。事務所が入ると住民が増えたり、お店ができると町が活性化したり移住にプラスに働いてきます。空き家の活用についてバリエーション豊富に提案し、協力したいと思っています。「住まいとしてはもう貸せない」と諦めている方もいらっしゃいますが、「事務所なら大丈夫」とか「お店をやるならここは丁度良いよ」という方もいらっしゃるので。この町かどオフィスに関しても今までコロナの影響でなかなか動きが出せなかったので、今後は積極的に相談会とかイベントを企画してもっと開いた場所にしていきたいと考えています。空き家から拾ってきた家具とかを1日陳列して格安で売ったり持って行ってもらうガレッジセールみたいなものも企画しています。そういった事を始めると空き家の片付けにもつながるし、気軽に寄ってもらえる場所になるかなと。そういったこの場所の活発な使い方を考えていきたいと思っています。

自分は月曜~木曜が長野、金曜~日曜が横浜という横浜と長野を毎週往復する生活をしていますが、これで結構良いなと思っているのは移動や仕事にストレスが少ない事ですね。平日に首都圏で仕事をして週末を地方で。という方が多いかと思いますが、首都圏での仕事は基本的に通勤ラッシュだし常に過密な状態で、かつ週末に地方に行くのも高速道路が渋滞していて…という事が多いと思います。逆に週末を首都圏にすると大体電車は空いているし、平日に地方に居るとゆったり仕事ができるし、高速も逆方向なので渋滞に引っかかることが無いです。だから意外と生活しやすくて、二地域居住を考えている方は特に「地方が別荘」という考え方ではなくて「首都圏が別荘」くらいの感覚で使えた方が実はいい暮らしができるなと思っています。「毎週往復していると疲れないですか?」て聞かれるんですけど、立科がすごく好きなので、こっちに帰ってくるだけで疲れが取れるんです。