インタビュー

20年来の夢をこの立科町で

ジェームス バックナーさん・益美さん・マヤさん

移住年
2019年
家族構成
親・子
出身
アメリカ
職業
プチホテル経営

ジェームスさんと益美さんはジェームスさんの出身地ロサンゼルスでご結婚され、ご家族4人でハワイ、サウスカロライナへと移住。その後、日本への移住を考え始めた頃、高冷地でも作付けができる山間部に適した農業について書かれた一冊の本と出会います。そして、高冷地農業の大きな可能性に気づき、人が集まる場所として何かできないかと考え、農場を運営するかたわら、宿泊施設を開くことが新たな目標になりました。 大きな目標にむけて進み始めたバックナーさんご一家は、現在はプチホテルアルペンシャトーでお客様をお迎えしています。家族のような温かいおもてなしと料理教室講師をされていた益美さんお手製のお料理が多くのお客様に喜ばれています。 そんなバックナーさんご一家に、これまでの半生について伺いました。

日本への慕情と、大自然への憧れ

立科町へ移住することになった経緯を教えてください

(益美さん)
以前は旅行会社に勤め、多くのお客様の旅のお手伝いをしていました。アメリカでの生活も充実していましたが、長い目で将来を考えた時にやはり日本に帰りたい、という気持ちが心の片隅にありました。そんなある日、修学旅行で訪れた松本がとても良い印象だったことを思い出し、思い切って長野県に来てみたんです。久しぶりに訪れるとあの頃の記憶が蘇り、圧倒的な大自然に言葉を失いました。

旅行業に携わっていた頃、お客様の楽しんでいる様子を見るのが“この仕事をしていて良かった”と思う瞬間です。それが原体験となって今のホテル経営に繋がっていて、人と人との関わりの中で仕事をしたいというのが私の20年来の夢です。ちょうどそのころ、不動産会社の方の勧めで、立科町を紹介して頂き、家族とアメリカに戻ってから話し合った結果、2019年にこちらを購入することになりました。

(ジェームスさん)
妻の出身地である熊本に行ったとき、日本の生活に初めて触れました。丁寧な暮らしぶりや自然と共に生きている感じがとても心地よく、共感したことを覚えています。それもあって長野県の物件に興味がわいて、立科町への移住を決めました。ここでは近くでスキーができるのも良いですし、女神湖・白樺湖といった湖もあります。山登りはあまりしませんが、考え事をしながらよく散歩をしています。

自然の恵みと人の優しさに支えられ

立科町に住むようになってからのメリット、デメリットを教えてください

(ジェームスさん)
ひとことで言えば空気や水が綺麗で自然が溢れていることですね。以前住んでいたカリフォルニアには四季がなかったので季節が移り変わっていくのは本当に素晴らしいと思います。一方で冬の寒さは厳しく、春を待ち遠しく感じますが、だからこそ芽吹きの季節は、ほっとします。その厳しい冬を迎える前に収穫されたお米やりんご、野菜が美味しく、お客様にも喜ばれています。

(益美さん)
私もここの冬はとても厳しいので時々逃げ出したくなります。移住して初めて迎えた冬は、雪が降ると喜んでいましたが、今はNo more(もういい!)です。

とはいえ、ここでの暮らしは厳しいだけではありません。この仕事で出会う方のほとんどは、とても気さくで素敵な方が多く、学ぶことがたくさんあります。そんな方々とのご縁で地域の魅力を発信していけるのがいいですね。中でも印象的だったりんごにまつわるエピソードをお話します。

秋に、お客様にお出ししているアップルパイに使用するりんごの仕入れ先に悩んでいた時、立科町のりんご農家さんに手配してもらうことになったんです。立科町の紅玉を初めて食べた時、そのシャキシャキとした食感と美味しさに感動しました!一度知ってしまったらもう他のりんごは食べられないというくらいです。以来そのりんご農家さんとのご縁が続いています。このアップルパイが人気で季節になるとアップルパイ目当てのお客様から、ご予約が入ります。

オフシーズンだからこそできること

冬の過ごし方を教えてください

(益美さん)
シーズンごとに、季節を感じるメニューを意識しながら色々なお料理を試作し、プランに見合うものを考えています。試作の段階で家族に食べてもらい、時には厳しい意見を貰うこともありますが、いつも新しいことに挑戦しています。

(ジェームスさん)
冬は、庭の手入れや、スキー、DIYなど、家の中の仕事をします。春を迎える準備はなかなか楽しいですよ。

(マヤさん)
オフの日は外へ行って風景の写真を撮ったり、宣伝できるようなお料理や広告の素材を集めています。SNSを活用してお客様が訪れたくなるような写真や記事の投稿をするように心がけ、こまめにホームページの更新をしています。

自然と共存していく

今後の夢や、これから立科町への移住を考えている方へのアドバイスがありましたらお願いします

(益美さん)
あらゆる所に暮らしてきた私達が言えることは、人間は自然の中で暮らすのが一番だということです。若い時は別としてもビルに囲まれた環境に長く居れば心が擦り減ってしまいます。そして、年齢を重ねると、長年住み続けた場所が一番暮らしやすいと思いがちですが、私たちは冒険することを選びました。たった一度きりの人生なのだから色んな所に住み、たくさんの出会いの中から得るものの方が大きな価値があると考えるようになり、ようやく永住したいと思う場所に行き着きました。

現在はホテルを営んでいますが、エコビレッジにとても興味があります。それは一人ひとりが尊重され、個性を活かすことで社会に好循環を生むことができる場所です。現代社会においては、そうした心身ともに元気を取り戻す場所が必要です。もっと言えば災害などで物資が必要な時に、そういったビレッジが機能して皆で協力して生活が送れるわけです。

(ジェームスさん)
例えるなら『大草原の小さな家』のような生活が理想ですね。ヨーロッパやアメリカにあるようなエコビレッジでは、有機栽培、ヤギの酪農、小屋の設計やハーブ栽培もします。これからの時代は自然と足並みをそろえて前に進むことが大切なのではないでしょうか。自分らしい暮らしができる場所を探しながら旅をするように暮らす…素敵だと思います。

(マヤさん)
私もすごく立科町が好きですし、落ち着きます。空気がきれいな所が一番だと思います。

ここを選んでくださるお客様のために

(益美さん)
数あるホテルの中でこのアルペンシャトーを選んでくださったお客様に、「アルペンシャトーに泊まってよかった。次もまた来たい」と思って頂けるようなホテルでありたいと思っています。前オーナーから譲り受けた際、建物と共に引き継いだ大切なマインドです。今年より来年、来年より再来年という風に皆様に末永く愛して頂けたらと、思っています。